この日は特にこれといったものが撮れず、意味もなく車を走らせていたのを覚えている。
林道をゆっくりと走行していると、夕日が木々を照らしていた。その時の私は、そういった美しいと思えるものを撮る気にならなかったのだろう。世界の美しさに反抗するように、車を止めて足元を眺める。ふと目に飛び込んできた光景は、先程まで意味も無く忌避していた美しい夕日に照らされた枯れかけの植物と蜘蛛だった。
シルエットが浮かび上がり、小さく幻想的な空間を作り出している。蜘蛛からは、どのような世界が見えているのだろうか。この作品を撮影するに当たり、蜘蛛が見ている夢を再現するイメージで色や構図を構成した