HOME カメラであそぶ テーマで撮ってみよう FA Limitedと★(スター)レンズは何が違うの?錦繍の谷川岳を撮り歩いてみた

FA Limitedと★(スター)レンズは何が違うの?錦繍の谷川岳を撮り歩いてみた

公開日:2020-11-05 ライター:タケル カテゴリ:テーマで撮ってみよう

秋だ!山だ!三段紅葉だ!

Limitedに★(スター)レンズ。他社のレンズに倣って開放F値で見ると★レンズがいいのかな?と思いきや、ユーザーにきいてみるとLimitedこそ!といった調子で薦められるし、PENTAXのハイクラスレンズは他社ユーザーから見ると何が違うのかスッと分かりにくいところがあります。これ私自身の話なんですけど、ならば自分で試してみようとFA 31mmF1.8 AL LimitedとD FA★ 50mm F1.4 SDM AWの2本の単焦点を携えて錦繍のマチガ沢・一ノ倉沢ハイキングをしてきました。

このコースは毎年同じ時期に歩いていて勝手が分かっていて落ち着いて試せるということもありましたし、なにより今年(2020年)は初冠雪があり三段紅葉を楽しむことができるタイミングでした。

※一ノ倉沢ハイキングコースは谷川岳の中腹にある散策路

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https://yamap.com/

話をレンズに戻して結論から言えばどちらも素晴らしいレンズなのですが、キャラクターは大きく違って「なるほど、これがLimitedと★の違いか。どっちもいいな!」という感想でした。参考までにリコーイメージングではFA Limited、D FA★レンズについて以下のように説明がされています。

現代的な性能評価では実現不可能な大口径と小型・軽量の両立

現代的な大口径レンズの設計では、諸収差の排除、解像力、コントラストを求めて、サイズの大型化は否めません。
FA Limitedでは収差をコントロールすることで、実写性能においての「立体感」「ヌケの良さ」を重視し、取り回しの良いコンパクトなサイズ感までも両立しています。
空気感までも感じられるようなその描写や、絞りの数値によって表情を変える懐の深さは、今でもなお特別なレンズとして支持を集めています。FA Limited | PENTAX Limited Lens スペシャルサイト | RICOH IMAGING

クラス最高峰の標準単焦点レンズ

デジタルカメラボディの画質性能のさらなる進化を視野に入れスターレンズの規格を見直し『新世代のスターレンズ』と呼ぶに相応しい新たなレンズを開発しました。最初の1本となる「HD PENTAX-D FA50mmF1.4 SDM AW」は、標準単焦点として親しまれてきた50mmの焦点距離を持ち、『新世代のスターレンズ』の象徴となるよう、AF(オートフォーカス)対応の標準単焦点レンズにおいてクラス最高峰の光学性能を実現しています。
─中略─
Kマウントデジタル一眼レフカメラ用レンズシリーズの中で最も高画質を追求したF1.4大口径単焦点レンズです。HD PENTAX-D FA★50mm F1.4 SDM AW | PENTAX STAR LENS スペシャルサイト | RICOH IMAGING

Limitedは高性能と小型も両立、★は防塵防滴で光学性能も最高をという違いはあるそうですが、どちらもPENTAX自慢のレンズということのようです。チャートによる評価などは海外サイトも含めてすでに語り尽くされたことだろうと思います。ペンタファンでは実際に使ってみてどう感じたのか?という点をお伝えできればと思います。

往路はFA 31mmF1.8 AL Limited

案ずるより産むが易しで実際に撮って感じてみようじゃないかとやってきました。秋の谷川岳。谷川岳ベースプラザ(ロープウェー駅)を過ぎ、群馬県谷川岳登山指導センターの先のゲートを抜けてハイキングコースに入ります。

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少しハードに調整したカスタムイメージ:ほのか

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赤・緑の対比が美しいカスタムイメージ:雅

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オレンジとブルーで明暗が際立つカスタムイメージ:風景

すでに抜群の彩りを見せる散策路を歩きながら、今日の光はどのカスタムイメージで合わせようなんて考えてパシャパシャと切り取ってみました。

たしかに公式サイトでの説明の通り、現代的なレンズとは違った趣のある写りで、シャープでありながらすこし柔らかさのある線で独特な艶めかしさを感じる描写です。なにより軽くて写りが佳いというのは気持ちが良いですね。写りはやっておくからお前は目の前の風景と光だけ見てろと支えてくれる感覚。

そんなことを考えているうちにマチガ沢出合(マチガ沢へ入っていく分岐路)に到着。ここから厳剛新道へ入り、第一見晴と呼ばれるポイントまで登ります。

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厳剛新道はその字のとおり険しく滑りやすい登山道ですが、同時に植生も豊かで足下の苔や雪に押し曲げられた木々に足を止めてしまいます。

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清らかなせせらぎと瑞々しい苔

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雪の重さで押し曲げられ横方向に伸びる幹に環境の厳しさを感じられる

樹林帯に入り必然的に撮影距離が縮まったことで、FA 31mmF1.8 AL Limitedの近接撮影時の傾向を見ることができました。遠景撮影時のヌケの良さはそのままに植物の力強さが伝わってくる描写です。

さて、マチガ沢出合から300mほど標高を上げたこの日のひとつめの撮影ポイント「第一見晴」に到着しました。そこで待っていたのは……

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谷川岳の山頂「トマの耳」から切れ落ちる標高差800mにもなる岩壁。ここまでのFA 31mmF1.8 AL Limitedの写りを見ていて、ここのカスタムイメージはリバーサルに決まりだなと感じました(同時に6x8判のVelviaでも撮影していたからということもあるんですけれど)。黒の締まりの良さがそう感じさせるのかも知れませんね。

それでは続いて★レンズも見ていきます。

復路はD FA★ 50mm F1.4 SDM AW

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切り立つ岩壁の質感はカスタムイメージ:銀残しで

厳剛新道の第一見晴から再びハイキングコースに戻り一ノ倉沢へやってきました。D FA★ 50mm F1.4 SDM AWはここがスタート地点。先ほどまでの青空が嘘のように薄く雲がかかりまるで別の日のようですが同じ日です。

さて、Limitedと★の違いを見ていこうなんていいつつ、天候が変わってしまったことで断っておくことがあります。D FA★ 50mm F1.4 SDM AWの写真には条件に合わせて画を整えるためにブラックミストNo.1フィルターとC-PLフィルターが装着されています。その点を留め置きつつご覧いただければ。

FA 31mmF1.8 AL LimitedからD FA★ 50mm F1.4 SDM AWに持ち替えて最初に感じるのはやはり「重っ!」ということ。当然その重量に見合った描写を得ることができるのは分かっているのですが、その重さは同時に気持ちのスイッチも切りかわります。

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柔らかなコントラストもしっかり描き出すD FA★ 50mm F1.4 SDM AW カスタムイメージ:銀残し

何気ないスナップでも画として作り込もうと意気込みますし、画面の隅々までカメラのポテンシャルを引き出しながら自在にコントロールできる安定感があるのが★レンズなのだなと思わされます。

こういう言い方は陳腐に過ぎるかという気もしますけど「撮りたいを叶えてくれる魔法のレンズ(標準)レンズ」と呼んでも過言ではないレンズです。FA 31mmF1.8 AL Limitedが力強く生き生きとした立体感を描くレンズとすれば、D FA★ 50mm F1.4 SDM AWはどこまでもスムースに存在感を描くレンズ。

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もちろん50mmというレンズが持つ画角の制約はあって、一ノ倉沢の1000mの岩壁の上下を入れようとすれば相応に離れて縦に切り取るほかありません。

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カスタムイメージ:フラットはD FA★ 50mm F1.4 SDM AWとの相性が抜群

最後にD FA★ 50mm F1.4 SDM AWとカスタムイメージ:フラットとの相性の良さをお伝えして終わります。フラットはその名の通りデフォルトの特性がフラットなカスタムイメージ。この特性がD FA★ 50mm F1.4 SDM AWのどこまでもスムースなボケやコントラストと相性が抜群で、その場で見た印象的なシーンを忠実に再構築させてくれます。画が暴れるとか、なかなかコントラストがまとまらない場合にぜひお試しあれ。

一ノ倉沢撮影時のポイント

ここからはおまけ話です。

地図を見てもらうと分かりやすいのですが、今回撮影したマチガ沢と一ノ倉沢(と幽ノ沢)は東北東に向かった沢筋。紅葉の時期となると太陽の軌道もかなり南よりに移ってくるので正午を過ぎると陽が稜線に沈みます。特に一ノ倉沢は撮影ポイントと稜線の標高差が大きく午前8時を過ぎると東尾根の大きな影が落ちてきます。ただし平地と違って気温は真冬並みなので防寒はしっかりと。
また、マチガ沢の第一見晴までの厳剛新道は岩がゴツゴツと転がり、落ち葉や泥で滑りやすいので登山装備が必要です。

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この記事を書いたライター

タケル

ペンタファンの運営メンバー(編集長)です。作例写真の撮影から記事の執筆、運用を行なっています。山に登ったり燻製を作ったりネコを撫でたりするブログを書きながら(SpaceFlier)急に真顔で写真を語り(Imaging World)ます。