至高の夕景を目指してNiSiへ ─ 角形フィルターのススメ Vol.1
綺麗な夕空に憧れて
身近でありながら目で見た感動をストレートに表現するのが難しい被写体、それが美しく焼けた夕空。海に、山に沈みゆく夕陽と雲が空に描く美しいグラデーションは人の心をつかんで離しません。
自身の目で見るそれはどこまでも滑らかで複雑で……その美しさを持ち帰りたくて夢中でシャッターを切るも、カメラやスマートフォンの画面にとじこめた空はすっかり輝きを失っていた……
フォトグラファーなら誰しもそんな経験を持っているのではないでしょうか。
綺麗な夕焼けなのにあばばばば……
情緒もへったくれもない言い方をすれば、それはカメラで掬いきれないほどの輝度差があるからということです。これを解決する方法として、露出を変えて連写した写真を合成するHDRという手法(最近のスマートフォンでは自動でHDR処理をしてくれるものもありますね)があります。
露出を変えた複数の写真のいいとこどりをして一枚に仕上げるHDRは、輝度差の大きなシチュエーションで強力な武器になる一方で手法的な弱点も抱えています。それは動くものに弱いということ。ソフトウェアの進歩で揺れる葉や水面の揺らぎなどはかなり自然に処理されるようになりましたが根本的な問題は残ります。
それなら1ショットで済むようにレンズに取り込む前に処理すればいいじゃない、という解決をするのが角形フィルター(厳密にはグラデーションNDフィルター)です。
角形フィルターとは?
GNDフィルターの話をする前に、少し戻って「角形フィルター」って何?という話を。
レンズフィルターといえば、レンズ先端にあるネジ溝に装着する丸形の枠にガラスが嵌め込まれたものをイメージするのが一般的です。レンズ保護のために装着するプロテクトフィルターはもっとも身近なフィルターですよね。風景写真を撮影する方にとっては、反射をコントロールするC-PLフィルターや、シャッタースピードの調整に用いるNDフィルターはお馴染みですね。
さて、これらの円形の金属枠でレンズ先端に装着する丸形フィルターに対して、専用のホルダーにガラスの板を差し込む角形フィルターと呼ばれる撮影用フィルターがあります。
NiSi V6ホルダーキット
一見すると丸形フィルターに較べて大がかりなホルダーで、かさばったり扱いが難しそうに思えたりしますが、レンズとの接続は各サイズに対応したアダプターリングが用意されていることで、いくつものサイズのフィルターを用意する必要がなくなります。
グラデーションフィルターには様々なタイプがある
そして角形フィルターでなければできないのがグラデーションを持たせた減光です。全面が均一なNDフィルターに対して、長方形のフィルターガラスに用途に合わせたさまざまなグラデーションの減光効果を持たせたのがグラデーションND(GND)フィルターです。
使用イメージ
実際にGND(グラデーションND)を使ってみよう
具体的にどう使うかと言えば、水平線に沈む夕陽(または昇ってくる朝日)の明るさを抑えて手前の全景との輝度差を抑えるというのがベーシックな使い方。実際に冒頭の夕陽が白く飛んでしまった写真にリバースGND(グラデーションの始めが濃く、徐々に効果が弱まるタイプ)を使用したのがこちら。
露出設定は先ほどとまったく同じままでガラッと画面が変化したのが分かります。
2枚を位置合わせして比較してみました。高輝度部分が抑えられたことで画面全体も締まり、ダイナミックな印象に仕上がっています。
今回試用しているNiSiのV6システムは、グラデーションが直線的なことで減光して欲しくない場所(この場合は左右の山並み)まで暗く落ちてしまうこともありますが、ホルダーを回転させたり、様々なグラデーションのパターンが用意されていることで、シチュエーションに合わせて適度な効果を得やすいシステムになっています。
たった一枚のガラス板で憧れの綺麗な夕空を手にすることができるNiSiの角形フィルターシステム。次回Vol2では実写を交えて、どのような使い方ができるのかをご紹介します。
角形フィルターの効果を手軽に試せるP1 Prosoriesというスマートフォン向けのキットもリリースされています。スマートフォンでも劇的に効果を得られて楽しいので、角形フィルターに興味が出てきたという方にオススメです。(キットにはミディアムGND8と偏光フィルターが付属しています)
撮影協力:NiSi Filters Japan